この曲が聴きたかった!4500人の観客が、大歓声で応えた。関西大学経済学部3回生の榎本陸さん(21)が所属する5人組・YAJICO GIRL(ヤジコガール)が27日、都内で行われた音楽フェス・未確認フェ スティバル2017のオープニングを務めた。昨年、3364組の頂点に立った5人が凱旋。グランプリに輝いた「いえろう」を1曲目で披露し、10代アーティストの聖地で大きくなった姿を見せた。

未確認フェスティバルは、TOKYO FM/JFNで放送中の10代向け人気番組・SCHOOL OF LOCK!と、タワ ーレコード・NTTドコモ・レコチョクが展開する新人アーティスト支援プロジェクト・Eggsが共催す る10代アーティスト限定〝音楽の甲子園〟。YAJICO GIRLは、9月6日に初の全国流通ミニアルバム「沈百景」をEggsレーベルから発売する。【写真上・未確認フェスティバル2017に凱旋したYAJICO GIRL。写真左から武志綜真さん、吉見和起さん、四方颯人さん、古谷駿さん、榎本陸さん 写真下・未確認フェスティバルの優勝旗を返還する=東京・新木場のSTUDIO COAST(2枚目はTOKYO FM提供)】

ボーカルの四方颯人さん(21)は「あれから1年経ったということで、成長した僕らを見ていただければ と思います。このライブもそうなんですけど、去年僕らここに立ってから、すごいいろんな経験をして、それをひとつ形にしようということで、ミニアルバムを発売することになりました。そこから1曲、大切な曲をやって終わろうと思います」と語りかけた。

一瞬の間。あっ「サラバ」だ!大きなライブハウスが、ひときわ上下に揺れた。この曲を、初めて聴いたのはいつだったか。最初はメロディが印象的。1カ月くらいの期間が空いて2度目。また違った印象だった。それから何度かライブで聴くたびに、印象が変わっていった。同じ楽曲なのに聴くたびに感じ方が違う。聴く側の思いや、その時の状況によってまったく違うのだ。心に響いてきて、そしてどんどん好きになる、不思議な魅力がある。

なぜかこの日は、歌詞がしみた。大人になるということに対する漠然とした不安。でも、それでいいというメッ セージを感じたのは22歳の私だけではないはず。会場を埋めつくした多感な10代には、なおさらだろう。

メンバーは関学、同志社、京都工芸繊維大と通う大学はバラバラながら、全員大阪府立千里高校の同級 生。本当に仲がいい。それぞれの個性とペースを絶妙な距離感で保ちながら、お互いを尊重し合ってい る。盛り上げ役が、関大生でギターの榎本さん。ケンカが嫌いで、人前に出るのが実はめちゃめちゃ苦 手。なのに、ツイッターで面白投稿を連発しフォロワーは1万人を超えている。

榎本さんは現在、関西大学を休学している。車や乗り物が好きで、自動車整備工場で洗車見習い中。宅配ピザのバイトもバイクに乗るのが楽しみでやっているという。関大生生活3年目で12単位しか取っていないというが、なんだかんだで生きていけるタイプだろう。「めっちゃ気持ち良かった。最後サラバで1人取り残されたって思ったけど、本当に気持ちよく弾けた」と、ステージを降りた後に笑顔を見せた。

ちょうど1年前。東京での大舞台に、アウエー感があったと話していた彼らの姿はもうなかった。四方さ んは「ホーム感があった。一番思い入れのあるステージが未確認フェスティバル。本当にめちゃめちゃ楽しかったです」と声を弾ませた。ギターの吉見和起さん(21)も「本番直前にめっちゃ緊張したんで すけど、お客さんのノリがすげぇよくて、めちゃめちゃ気持ちよかったです」と汗をぬぐった。

心地よい旋風を巻き起こした「いえろう」を武器に、いろんなオーディションを戦った。ベースの武志綜真さん(20)は「去年はオーディション出る側やったんで、プレッシャーがあったんですけど、きょうは緊張せずに好きなように演奏できて楽しかったです」と、歴戦の跡をうかがわせる。ドラムの古谷駿さん(21)は「人数の多い会場で、おびえることがなくなった」と手応えをつかんだ。未確認フェスティバルに凱旋し、そして新たなステージに進んでいく。思い出の舞台に残した「サラバ」に、5人の決意を込めた。

「沈百景」のプロモーション撮影では、海岸に掘られた穴にメンバーが入っている。実はこの穴「だんだん海藻が近 づいてくる、やばい潮満ちてくる」と焦りながら、メンバー自らがスコップで掘ったという。

5人の心は少年のまま。そんなYAJICO GIRLに、ファンは穴のようにハマっていく。彼らが作り出す音楽はこれからも成長しながら、聴き手の中に独特の風景を描き続ける。 【山本朝子】

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