関西大学応援団の(左から)副団長・米田晴香さん、団長・松山小夏さん、副団長・楠田梨乃さん

関西大学応援団の第103代団長、副団長3人全員が、女子学生で占められた。1922年(大正11)に設立された応援団で団長、副団長ともに女性がなるのは92代以来。女子団長を、2人の女子が脇を固める体制は103年の歴史で初めてだ。13日に開幕した大阪・関西万博会場での演舞も決定。〝花の〟応援団が、多様性を理念に掲げる万博で世界へ名をとどろかせる。

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応援団は応援の指揮を執るリーダー部、吹奏楽部、バトン・チアリーダー部の3部からなる。団長の松山小夏さん(文4)、副団長の米田晴香さん(化学生命工4)はチア、もう1人の副団長・楠田梨乃さん(文4)はサックスを担当していた吹奏楽部から、羽織袴、高下駄を履く生活となった。

松山さんは「今まで、団長はリーダー部から出ることが多かったが、自分たちの代にリーダー部がいない。去年1年間、誰が出るかっていうのを話し合っていて、でもやっぱり結構重い役職なので、誰もやりたいって言い出す人がいなくて。団長がいないと、応援団がなくなってしまう。それは嫌やなって思って、それなら私がやりたいと思ったのがきっかけです」と、団長に立候補。約150人いる団員から信任を受けた。

関西大学応援団の過去の女性応援団長(左から)第92代・黒澤花衣さん、第94代・竹内美沙保さん、第100代・鈴木れな穂さん

学ラン姿がおなじみのリーダー部員は、新入生が入部するまでは3回生3人のみ。チアも減少が続いていたという。米田さんは「応援団の人数が、どんどん少なくなっている。チアも50人くらいいたのが、30人くらい。応援団が大好きなので『ここでストップ』ってわけではなく、いろいろな人に知ってもらいたいし、私たちの応援を見て感動を与えられたらいいなと思う」と覚悟を決めた。2025年は、すでに7人がリーダー部への入部を決めている。

楠田さんは、吹奏楽部が応援団だとは知らずに入部したという。2024年の応援団長だった森口友翔さん(25年社会卒)は、22年ぶりの吹奏楽部からの団長だった。「去年、団長が吹奏楽部から出ていまして。少し憧れもあった。私は吹奏楽部の部長もやってまして、先頭というか引っ張る立場なら、絶対副団長になろうと思って」と振り返った。

1回生当初は「応援団=怖い」というイメージがあったという。楠田さんは「野球応援とかもしたことがなかったので、応援団の活動の楽しさというか、スタンドが盛り上がる感じだとか、拍手くださる姿とかを見て『なんて素晴らしい組織や』って思って。もっと早く気づけたらよかったなと思った。自分が副団長になって、もっと吹奏楽部を派生していきたいというか、応援団に対する思いを伝えていきたい。壁みたいなものを取っ払っていきたい」と意気込んだ。

関西の主要私立大で、25年は「同志社大と近畿大学が、今年は団長が女性。関学は男性なんですけど、吹奏楽部で。立命は元々リーダー部がいなかったんですけど、今年は(新4回生の)リーダー部がいない。みんな同じ境遇」(松山さん)。全国の大学でリーダー部員が減少し、チアや吹奏楽部の女子部員が団長をするというのは珍しくなくなっている。 

関西大応援団で、史上4人目の女性団長となった松山さんは「『今年(団長、副団長)3人女の子なんやね』って言われるんですけど、マイナスな言葉よりも割とプラスでとらえてくださることが多い。特に何か、女性だからとかはあんまり思わないんですけど…。元々チアで『頑張れ~』とか高い声で言ってたんですけど、声の出し方とかは自分が女性やからこそ、人一番大きく見せたりとかしないと、男子の団長には勝てないっていうのはあるので、意識するところ」と、他校の男子団長への対抗心を燃やした。 

リーダー部部長の桜田凌成さん(化学生命工3)や応援団OBが、3人に演舞を指導している。身長145センチと小柄な米田さんは「体が小っちゃいので、その分声の大きさと、振りの綺麗さで見せないといけないで、そういうところはリーダー部長に見てもらってます」と猛特訓の一端を明かす。172センチの楠田さんは「『うちら3人とも女性なんや』って今思ったくらいに、自分自身気づいてなかった。体は大きい方なので、それはめっちゃいいことだと思うんですけど、運動オンチすぎるので、そこを鍛えてもらっている感じ。筋肉痛がすごくて…」と笑った。 

女子ならではのカラーも出ている。松山さんは、団員の相談に乗る時は「(千里山キャンパス内の)スタバとかはよく行きます。ご飯とかもよく行きます。割とラフな関係」と明かす。米田さんは「羽織袴を着る時は、チアみたいな派手な化粧はしない。すっぴんくらい」とメイクの変化を語った。 

応援会場への行き帰りは学ランや羽織袴ではなく、スーツ姿が正装。松山さんは「スカートとパンツ、両方あります。スーツで行き帰りした方が、気持ちも切り替えられる」と説明した。ちなみに松山さんはスタバ、米田さんはサーティーワンアイスクリーム、楠田さんは学内でSA(スチューデント・アシスタント)のアルバイトをしている。 

チア、吹奏楽部の衣装に変身!こんな素敵な笑顔に!

減少傾向にある応援団員、特にリーダー部員の獲得が最重要課題だという。「本当に、応援団があることが当たり前じゃない。まずは3部で、リーダー部員を頑張って獲得するっていうのは一番の目標」と団長自ら危機感を募らせた。 

桜田さんは、全国の大学でリーダー部員が少ない現状について「応援団っていうもの自体が、けっこう上下関係とか礼儀、礼節を重んじる団体。言葉づかいや行動であったりが、かなり厳しく見られる。応援依頼も年間何百依頼もあって。今、少ない人数でやっているので、時間の拘束も長い。大学生というのは何でも自由にできる時期。部活に拘束されて、その部活も厳しい環境。やっぱりそこが、今の大学生には合っていないのかな…」と、問題点を指摘した。 

上下関係や礼節を重んじる根幹の部分は守りながらも、時代に合わせて変えていくことが大事だと訴える。「どうやったらみんな、モチベーション出るかな…とか。ずっと上下関係って感じじゃなくて、オンオフの時は。それも変えていかないと。後は、応援団の魅力っていうのがまだまだ知られていない。自分も大学入るまで応援団の存在すら知らなかったので、もっともっと発信していったり、応援団の良さとか力を知ってもらえる機会を増やす」。2025年の今に合った応援団の〝アップデート〟を目指す。 

関西大学は、万博パビリオンでの催事ステージなどを貸し切る「関大デイズ」を開催。8月31日に「電力館 可能性のタマゴたち」屋外ステージで、応援団の出演が予定されている。 

今年の応援団の方針として「繋」の文字を掲げた。立ちたい場所として神宮球場、アメフトの甲子園ボウルでの阪神甲子園球場を挙げた松山さんは「関西万博とかもあるので、新たな繋がりも増えてくる。そこに積極的に臨んでいって、応援団が好きになってもらえる人を1人でも増やしたい」と思いを込めた。 

新入生へのメッセージを聞いた。 

松山さん「応援団の活動で一番大切にしているのが母校愛。新入生は、やはりここで学びたいと思って、選んで入学している人たちだから。これから始まる4年間でどれだけこの大学を好きになれるかっていうのを楽しみに思ってもらえたらいいな」 

米田さん「本当に限られた4年間の大学生活の中で、普段やらない、卒業したらできないってことが応援団。応援する相手がいてこその自分たちで、貴重な経験をするにはもって来い。サークルだったら会う人が限られるが、応援団は本当にいろんな人と関われる。外部とか目上の方ともお話をさせていただく機会も多いので、社交性も身につく。応援団に入らなくても、そういうスピリッツは大事にしてほしい」 

楠田さん「この4年間は、本当に自分がやりたいことをやれる期間。やりたいことをやって損はないというか、やりたいことをやらなかったらちょっと後悔しちゃうかもしれない。とりあえずやってみるという精神がとても大事だと思っていて、やりたいってことはあんまり深く考えずに、やることが大事」 

桜田さん「何かひとつ、自分が一番になれるくらい熱中してほしい。一番になろうと思ったら並の努力ではできないし、その努力とかがこの先の人生に役立ってくるのか本当にわからないけれど、バイトでもいいし、何でもいいので、その中で一番になれるものをできたらと思います」 

4月に千里山キャンパスの桜の木をくぐった新関大生を熱烈応援した。【佐野日向子】

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