FM802の朝番組「DASH FIVE!」(月〜金午前5時〜7時)の月〜水曜を、関西大学出身のDJ樋口大喜さん(ひぐち・だいき、25=14年法卒)が担当している。法学部在学中の14年、同局のDJオーディションに合格。深夜番組を経て、昨年3月から朝の顔の一人となった。中島ヒロトさんに励まされ、関大一中時代から802のDJを目指してきた樋口さんの声が、ラジオから流れている。

帰りが遅くなったサラリーマンと逆行するように、樋口さんは大阪市の自宅から通勤する。大阪・南森町にある局に着くのは深夜2時。FM802朝の顔の1日の始まりは、あまりにも早い。【写真・DASH FIVE!を担当する樋口大喜さん=大阪市のFM802】

番組のスタッフは、樋口さんひとり。番組の進行はもちろん、選曲や構成、放送で読むニュースのチェックも1人でこなす。「毎日失敗しています。緊張で、何を言っているかわからない。次何をしゃべろうか、言葉を探しています」と、2時間の真剣勝負に全身全霊を傾ける。

関大生時代は、関西大学放送研究会(KBC)に所属。お昼の校内放送で、千里山キャンパスに声を響かせていた。関大一中時代から、FM802のヘビーリスナーだった樋口さん。身長が伸びない悩みを、中島ヒロトさんの番組で生相談。電話口から返ってきた答えは「牛乳飲めよ!」のひと言だった。

あまりにも適当すぎる回答。身長は伸びなかったが、樋口少年の将来を決めた。「字面や声色、タイミング…相談している僕以外の人間が聴いてもおもろいし、がんばれ!と巻き込んでいる。ヒロトさんにしか言えない」と、人生を左右した名回答を振り返る。

FM802のDJになりたい。同局のイベントに何度も足を運んだ。関大出身のDJ内田絢子(じゅんこ)さん(2000年社卒)や、浅井博章さんらにデモテープを手渡しアドバイスをもらった。内定を得た企業の研修旅行参加が迫った5回生の夏。「就活はFM802で最後にしよう。一番の目標と戦って、ダメやったらあきらめよう」。4度目のDJオーディション挑戦。本人がスタジオにいるとも知らず、ヒロ寺平さんの髪形をフリートークでイジった度胸が評価されたのか、長年の夢がかなった。

曲には体温がある。東京スカパラダイスオーケストラの谷中敦さんから、かけられた言葉だ。アーティストはなぜこの曲を、どういう理由で作ったのか。楽曲の体温を伝えることが、ラジオDJの仕事だという。「CDだけでは伝わらない。言葉を選んで曲のイントロに乗せて、うまく伝えるのも仕事のひとつ」。番組がない曜日にも局入りし、じっくり時間をかけて選曲する。

LINEで告白してしまった。仕事で嫌なことがありました…リスナーから様々な相談やメッセージが送られてくる。「その子が聴いていても、たまたま聴いた人も応援したくなるようなことが言えたら。こういう曲があるよ、とも話せる。等身大の自分で、体温が伝わるんじゃないかなぁ」と語気を強めた。

あわただしい朝を迎えた学生や主婦、会社員の体温を上げていく樋口さん。ラジオの前には、中島ヒロトさんから送られた「身長伸びろ!伸びろ!」と書かれたステッカーを、勉強机に貼っていたかつての自分がいる。

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