西アフリカのトーゴ。最貧国の一つでありながらアフリカの笑顔と称される国に長期滞在し、帰国後は、日本とトーゴを繋げる活動に奔走している関大生がいる。滋賀県出身の辻旺一郎さん(21=社3)。「去年、20歳のときに、自分の生活をあらためて振り返ってみたんです。家族、友達、あったかいお風呂、食事それらすべてが当たり前になってるなぁと気づかされました。心、汚れてるなって思いました。心をきれいに、どこか遠くへ行こうって思って」。

どうせ行くなら、自分の今いる世界とまったく違う世界に飛び込んでみたい。辻さんにとって、それがトーゴだった。「行く前はアフリカに対して、何不自由なく生きている自分と比べて、かわいそうというイメージを持っていました。でも、漠然と今行かないと一生行かへんという思いがどこかにあったんです」。

そこには想像以上の世界があった。「アジア人は僕ひとり。言葉もわからないので、身の回りすべてがさっぱり。何をすればいいのか、しなきゃいけないことがわからない。自分があす、起きる時間すらわからない。ただわかっていることは、ここがトーゴだということだけ。出発前の〝なんとかなるだろう〟と根拠のない自信はすぐに打ちのめされました」

言葉がわからない状況だからこそ、彼の五感はフル活用されたに違いない。トーゴの素晴らしさが、日々身に染みてきた。カメラなら、言葉がなくてもいける。毎日トーゴ人の写真を撮り、最終的には2000人のポートレートを撮りためた。

「マラリアにかかったときは本当に死ぬかと思いましたね」。もちろん病院に行けば治るが、日本にも電話しないと決めていた辻さんは、マラリアの恐怖と一人で戦った。【写真上・トーゴでの辻旺一郎さん 写真下・辻さんの携帯はガラケーだった(撮影・山本朝子)】

6カ国回った西アフリカ。トーゴの笑顔は一番だった。「優しくて、すぐに懐にはいってくる感じ、壁なく話しかけてくる人たち。一度会ったら兄弟な彼らを大好きになりました」

トーゴの人たちから心の豊かさを教えてもらった辻さんは、日本に何か伝えられないかなと思いだした。日本人のほとんどが、トーゴがどこにあって、どんな国か知らない。トーゴはアフリカにあると当てた人も、その先を知っている人は少ない。

「アフリカには54もの国があり、それぞれ伝統・文化・言葉を持っていて同じではありません。そして、アフリカといえば、危険、貧困、かわいそうという固定観念。確かにトーゴは世界最貧国の一つ、経済的に豊かでないことは確かです。しかし、素敵な心を持っている。だから〝アフリカの笑顔〟と称されているんです」

トーゴには日本大使館がなく、日本の広報活動も一切ない。辻さんは、日本とトーゴの関係を知ってもらうためのプロジェクトを立ち上げた。目標はトーゴの全国民730万人に向け、国営放送を含む主要放送局3局で、日本文化のドキュメンタリー番組を放送すること。経済発展した日本だからこそ分かる文化の継承の仕方を、経済発展の最中にあるトーゴに伝える。日本を知らないトーゴの人たちに、日本を伝えたい。https://camp-fire.jp/updates/view/13617

人には人生において、運命に導かれる旅がある。トーゴの笑顔が素敵という辻さんの笑顔も、こんなに素敵だった。【山本朝子】

辻さんは写真集「これがトーゴだ。」を発売。きょう9日に行われる品川区の小山台会館で行われるトークセッション「トーゴを伝え、日本を伝える」にも出席する。辻さんの熱い思いを、直接聞いてみてください!

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