関西大学千里山キャンパスを舞台にし、関大出身のお笑いコンビ・ジャルジャルの福徳秀介さん(41=06年文卒)の同名小説が原作の映画「今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は」(今日空)のメガホンをとった大九(おおく)明子監督(56)が11月4日、12月3日に相次いで同キャンパスに来学し、トークショーや学術講演会に登壇。2025年4月公開予定の同作品への思いや撮影秘話を語った。
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統一学園祭最終日の11月4日、悠久の庭の中央ステージに立った大九監督は、脚本の取材で千里山キャンパスの関西大学博物館を訪れた際に関大初の女子学生で、男女の格差を主張し女性の地位向上を訴えながらも1931年(昭和6)、27歳で早世した文筆家・北村兼子の特設展示が設けられていたことを振り返った。
北村兼子が1927年(昭和2)に吹き込んだとされるレコード「怪貞操」を聴き、しばらくその場から離れられなかったと述懐した大九監督は「その時に流れていた北村兼子さんの言葉がとっても、私の胸に刺さって、それをそのまま映画で使わせてもらっています。100年前の女子学生が、今の女子学生…女子学生どころか私のような大人の女性も感じている歯がゆさや怒りを、100年前からずっと何も変わっていないということに怒りと恥ずかしさを覚えました」と話した。
福徳さんの原作小説にはない、北村兼子のエピソード。存在を知る関大生は少なく、大九監督の熱弁にトークショーの司会を務めた関大生は絶句。「どうした!?ついて来い!」と笑いながらゲキを飛ばした。

大九監督は、文学部生120人を前にした12月3日の学術講演会でも「100年前に言っていることと、いま私が言いたいと思っていることは寸分違わない。まるで進歩していない。何も良くなっていない。違和感があることは、すべてジェンダーギャップという言葉に集約される。100年も近くも前に気がついて、声を上げている人がいるのにもかかわらず、何もできていないという腹立たしさでしょうがなくて。絶対、この映画を作るにあたって、絶対に盛り込まなくっちゃ…と思わされた」と胸中を明かした。
悠久の庭のステージに立った大九監督は「いや、懐かしいですね。いろいろ撮影させてもらって(凜風館から)屋上からここを振り下ろしで撮らせてもらったり」と、関大がまるで母校のよう。「昔、遊園地だった」「(正門の『関西大学』の門標は)古典の文字から一個一個拾っている」と、関大生以上の知識を次々と披露。司会の関大生は「知らなかったです…」をまたまた黙らせた。
大九監督は、「今日空」が千里山キャンパスと関大前で9割が撮影されたとし、関大前のレトロ喫茶「フォージュロン」やカフェレストラン「ケープコッド」、豊津の銭湯「七福(しちふく)温泉」が、ロケ地となったことも明かした。
福徳さんの小説では、ケープコッドの店名が「プーケ」になっていたとして「福徳さんはこの小説で、暗号のようにいろんなことを隠している。本当に言いたいことって何だろう?って、謎解きみたいな形で、解放していくような…してしまったような…」と、映画化にあたって〝真意〟を説き明かしたという。
主人公の冴えない関大生・小西徹役を演じた萩原利久さん(25)について「(役への)アプローチが難しかったので答えをつくらないようにして、いくつも用意して現場に来たって言ってましたね。まずAパターンでやってみて、私が違うねって言うと『承知しました』って、別のパターンが出てきた…っていうことだったのかな」と、撮影時の裏話も披露した。
大九監督は、トークショーに詰めかけた関大生に「卒業しないとわからないけど、この4年間、ここで過ごした時間っていうのはすごく特権的で、とってもその後の人生に大事な時間になると思います。徹底的に楽しんでください」と手を振り、スクリーンでの〝再会〟を呼びかけていた。【佐野日向子】
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