セーリングの女子49erFX級でリオデジャネイロ、東京五輪に出場し、2024年のパリ五輪に挑戦する関西大学人間健康学部の高野芹奈さん(せな、24)が16日、千里山キャンパスでの2022年度春学期卒業式に出席。約7年間通った人間健康学部を卒業した。東京五輪後、化粧品メーカーとのスポンサー契約が終了。資金難を訴えていたが、ペアを組む山崎アンナさん(22)とともに滋賀県の医療機器メーカーへの入社が決まった。同社の支援を受け、関大史上初となる3大会連続の五輪出場を目指す。
学歌が流れると、高野さんは100周年記念会館の天井を何度も見上げ、まばたきをした。「中学の時から関大にいたので、いろんなことを思い出して…グッときました」。関大一中からの3・3・7で計13年の〝関大生活〟。大学での7年間は1回生でリオ五輪に出場し、世界を転戦する生活だった。堺キャンパスで授業に出られず、2回生までに終えるはず…だった英語の単位をゲットしてようやく卒業を果たした。
人間健康学部の春学期卒業生は2人。「せっかくなので…」と人間健康学部長の村川治彦教授からスピーチをムチャぶりされた高野さんだったが「大学生活で2度五輪に出られたことは、誇らしいのと同時に、皆さまのおかげだと思っています。大学生活で学んだことがいっぱいあったので、それを糧に、パリ五輪に向けてこれからも頑張っていきます」と堂々としたもの。〝パリ五輪〟の部分に力を込めた。
東京五輪後、山崎アンナさんとの〝アンセナ〟ペアの活動を支援していた化粧品メーカー・ノエビアとの契約が終了。年間約2000万円の活動資金のメドが立たなくなった。企業への営業活動も苦戦。高野さんは、驚きの行動に出た。
あの前澤友作氏をはじめ、アリアナ・グランデ、ジョニー・デップ、ジャスティン・ビーバー、テーラー・スウィフト、ビヨンセ、レオナルド・ディカプリオ…といった世界のセレブに、インスタで支援を求めるDMを送った。6月に開かれた都内での会見で、資金難とセレブへのラブコールを明かすと、朝日新聞の1面やスポーツ紙などで大きく取り上げられた。
セレブからは「返事は来ませんでした」と気まずそうだった高野さんだったが、拾う神がいた。報道を見た滋賀県の医療機器メーカー・YMIT(ワイミット)が、支援に名乗りを上げた。数日前に入社が内定。10月からは山崎さんとともに、同社社員としてパリ五輪を目指す。
活動資金を捻出するため、バイトもしていたという高野さんは「セーリングの活動を、業務としてやらせていただける。本当によかった。けっこう崖っぷちの状態だった。モチベーションが爆上がりです!」と笑顔。江ノ島のヨットハーバーを拠点に、新たな航海に飛び出した。
パリ五輪でのメダルレース(決勝)進出が目標。2024年が自身のピークと感じ、集大成の走りをマルセイユの大海原で見せる。「選考も始まるので、まずは出場権を獲ること」。現役生・卒業生とともに、五輪に3大会出場した関大アスリートはいない。追い風を背に、高野さんが立ちふさがる荒波を超える。
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