「フィギュアスケート・全日本選手権」(26日、長野ビッグハット)
アイスダンスのリズムダンス(RD)が行われ、関西大学KFSCの村元哉中(かな、27=16年人間健康卒)、高橋大輔(34=08年文卒)組は67.83点で2位発進。26日朝の公式練習中に村元さんが左ひざを負傷する不運をはねのけ、デビュー戦となったNHK杯の64.15点を上回った。
演技が終わると、安堵(あんど)の笑みで互いに強く抱き合った。観客が大きな拍手で、 村元、高橋カップルが氷上に立っていることを惜しみなく祝福する。五輪舞台を経験する高橋さんが「本当にあの時は、生きた心地がしなかった」と動揺するほどの緊急事態。アイスダンス2戦目となる全日本選手権で、アクシデントは起きた。
26日朝の公式練習中だった。ツイズル(2人同時の多回転ターン)の練習中に、タイミングがずれてともに転倒。高橋さんの全体重が、村元さんの左ひざにかかる体勢に なった。
激痛が走ったという村元さんは「転倒する時って一瞬の出来事だったので、何が起こったんだって感じでした。びっくりしたのと『これはやばいかも』という感じで最初は立てなかったんですけど」と振り返る。
出場を決意したのは、演技直前の5分間練習だった。公式練習後に医師の診察を受け、じん帯に損傷がないことを確認。氷上の感触を確かめ、ギリギリで覚悟を決めた。
大アクシデントにもかかわらず、演技はほぼノーミス。アイスダンスデビュー戦となった NHK杯よりも、高い評価を得た。高橋さんは「いつも以上にメンタル的には厳しかったと ころですけど、とりあえず終えて、ホッとひと安心って感じでした。始まる前から終わった後も、お客さんがすごい温かい空間を作ってくださって、ほんとに助かりました」と胸をなで下ろした。
互いに、パートナーをさりげなく気づかった。村元さんが「とりあえず大ちゃんに心配かけないように『大丈夫だよ』」と声をかけると、高橋さんも「自分がしっかりしなきゃな」 という思いで、いつもと変わらないように振る舞った。
「大ちゃんが全力でサポートしてくれたのがすごい伝わったんですよ。『あー!センキュー!』みたいな。やっぱりパートナーがいるって心強いなって思いました」と、村元さんが視線を送る。高橋さんも、村元さんのアクシデントを感じさせないパフォーマンス に「哉中ちゃんの方が男前。『かっけーな!』って思いながら滑ってました」と強心臓をたたえた。
左ひざの状態が気になるが、村元さんは「足の状態が一晩おいてどうなるかわからないんですけど、せっかくの全日本なので、滑れる状況に持っていけるように、メンタルも体も整えてあす滑りたいと思います」と出場に前向きだ。高橋さんも「思いっきり全力を尽くして、やっていきたいなと。そのための準備をして迎えたい」と、パートナーの意気込みに応える。
NHK杯から全日本選手権へのわずか1カ月の間に、スピードやステップの表現力にも磨きをかけた2人。さらに大きな試練を乗り越えたことで、絆や信頼もより深まった。
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