4年ぶりの復帰戦に臨んだ高橋大輔さん=尼崎スポーツの森(撮影・梅本歩佳)

「フィギュアスケート・近畿選手権、男子SP」(7日・兵庫県尼崎スポーツの森)

2014年2月14日のソチ五輪男子フリー以来、1696日ぶりの競技会に臨んだ関西大学KFSCの高橋大輔さん(32=08年文卒)は、77.28点で首位発進した。目標とする全日本選手権の予選を兼ねた今大会では、上位13人が11月の西日本選手権に進出。エントリーが10人のため、8日のフリーで棄権さえしなければ夢舞台へ一歩近づく。

【写真】これからの目標を聞かれた高橋大輔さんがまさかの回答

現役復帰にかけたすべての思いを、2分40秒で表現するにはあまりにも短すぎる。演技を終えた瞬間、復帰を心待ちにした1500人の観客が総立ちになった。会見場に現れた高橋さんは「めちゃくちゃ緊張した。足ガクガク。(ジャパンオープンで)織田くんがすごい点を取ったので、やめてくれ〜っと思った。大きなミスがなくてよかった」とホッとした表情を見せた。

4年ぶりの復帰戦に臨んだ高橋大輔さん=尼崎スポーツの森(撮影・梅本歩佳)

4年間のブランクを、みじんにも感じさせなかった。ジャンプはすべて着氷。指先にまで、妖艶な雰囲気を漂わせた。どんな点数をもらえるか楽しみー。5日の開会式でそう話していた高橋さんだったが、得点の発表を前に控室に戻ろうとして長光歌子コーチ(67)らにツッコまれた。「早く帰って着替えたかった。(得点は)自分が思っている以上に高かった」と笑いながら振り返った。

テレビの仕事で訪れた昨年の全日本選手権で、銀行員スケーターとして現役生活を続ける後輩の山田耕新さん(27=14年政策創造卒)らの演技に胸を打たれた。カムバックを心に決め、今年の年明けから拠点とする関西大学たかつきアイスアリーナで本格練習を始めた。

左内もも肉離れのアクシデントに見舞われたが、9月5日からジャンプの練習を再開。目頭を熱くした長光コーチは「今の状況でよくここまで来られた。本当に緊張したと思う。勝負勘は残っている。勝ち負けや勝敗ではない、大輔が見せてくれるものを出せれば」と愛弟子の胸中をおもんぱかった。

関西大学のリンクで練習に打ち込む姿は、関大生スケーターのお手本となっている。宮原知子さん(20=文2)は「毎日くぎづけになりながら練習をしている。曲が始まって、踊り始めた瞬間から世界観が生まれる」と、自身の滑りを止めるほどだ。

近畿選手権の雰囲気も一変。6分間練習で高橋さんがリンクに登場すると、会場は異様な熱気に包まれた。2位の中村優さん(なかむら・しゅう、22=政策創造4)は「全日本選手権に近い雰囲気だった。前の滑走だったので、こっちもプレッシャーを与えられたらいいなと思った」と新たな刺激を生む。

どうしても、捨て切れなかった氷上への未練や思い。稀代のスケーターは、真剣勝負の世界で生き生きとしていた。「思い通りには行っていないが、プレッシャーを自分の力に変えられるようにしたい。戦っていけることは幸せ」。美しいピアノの旋律に乗せ、高橋さんが新たなスケート人生の幕を上げた。【村岡すみれ】

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