平昌五輪に出場するフィギュアスケート女子の宮原知子さん(さとこ、19=文2)が18日、関西大学千里山キャンパスでアイススケート部の織田信成監督(30=15年文院修了)、同部の濱田美栄コーチ(58)、関西大学の芝井敬司学長(61)とともに会見に臨み「大舞台でしっかりと演技をしたい。貴重な経験と胸に刻んで、ベストを尽くしたい。結果を出すことも大事ですけど、感動を伝えるような演技をしたい」と決意を語った。【写真・関西大学から贈られた日の丸への寄せ書きを広げる宮原知子さん=千里山キャンパス(撮影・行友重治)】

緊張していた宮原さんの表情が、徐々にやわらいでいった。記者会見には、30社60人の取材陣が殺到。会見場に張り詰めた空気を、信成監督のアドバイスが一変させた。2010年のバンクーバー五輪男子フリーで、靴ひもが切れた悪夢を振り返り「靴ひもだけはしっかり結んで。気をつけてください」。まさかの自虐ネタに、この日の主役も「気をつけたい。ひもが切れる前に替えたい」とほおをゆるめた。

宮原さんは、高等部の卒業論文に「五輪には魔物がいるのか」というテーマを選んだ。信成監督は「魔物はいますか?どういうものですか?…って。ボクに聞くかと思いました」とツッコむ。魔物もいるが、女神もいる。女神に会った時にどんな演技をできるかーそんな信成監督の助言や荒川静香さん、田村岳斗さんらの体験談をもとに書き上げ、大舞台に潜む闇の正体をつかんだ。

魔物は自分が作り出してしまうもの。宮原さんはそう結論づけた。「自分が勝手に作り出す不安が、気持ちを邪魔するものじゃないかと思っている。試合を積んできて、自分を信じることがいちばん」。1万2000字に及ぶ卒論執筆で、見えない敵と対峙する心構えを身につけた。

左股関節の疲労骨折を乗り越え、つかんだ五輪切符。フィギュア全日本選手権で見せた濱田コーチとの涙の抱擁は、多くの人の胸を打った。芝井学長もその一人だ。「濱田コーチをもう一度、泣かしてほしい」と、宮原さんに仰天エール。平昌のリンクで“感動シーン”再現を要望する。

濱田コーチは「サトコをサポートして、大舞台へいつも通りに臨みたい。本当の意味で、大人のスケーターになった。五輪への夢が叶わなかった人たちの分も含めて精進して、滑り切って欲しい」とまな弟子に声をかけた。

関西大学広報課の職員が「織田監督にハンカチを用意していましたが、きょうは必要ないようですね…」と会見を締めくくり、宮原さんも思わず笑う。千里山キャンパスのなごんだ雰囲気は、魔物出現を許さなかった。

ブームスポーツでは、この日の会見の全文を掲載します。

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